![1967年10月、日本武道館で行われた吉田茂元首相の国葬。国内外から約6千人が参列し、黙祷を促すサイレンやアナウンスが流れた](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/3/6/840mw/img_369b8b22e1585cf1247ca3d6e9b65457120340.jpg)
安倍晋三元首相の「国葬」が、9月27日に開催される。だが、世論は二分し、本誌のアンケートでは、「反対」が8割近くになった。いったい、誰のための国葬なのか。AERA 2022年9月26日号の「国葬を考える」特集の記事から紹介する。
【図表】安倍氏は国葬、約16億だが…歴代首相の葬儀形式と国費はこちら
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国会前で、シュプレヒコールがわき起こった。
「国葬反対!」
「閣議決定いますぐ撤回!」
銃撃事件で亡くなった安倍晋三元首相の国葬中止を求める集会が8月31日夕刻、東京・永田町の国会前で開かれた。「国民に弔意を強制してはならない」の横断幕も掲げられ、周辺の道は約4千人(主催者発表)で埋め尽くされた。「アベの国葬反対」と書かれたプラカードを掲げた都内在住の主婦(47)は、こう言って声を上げた。
「国の予算は私たちの税金。税金を勝手に使われて、黙ってられないわよ」
9月27日、安倍元首相の国葬が東京・日本武道館である。
国の儀式として行うことから、政府は「国葬」とは言わず「国葬儀」という表現を使うが実態は変わらない。国が国家の儀式として国費で行う葬儀だ。
戦後、首相経験者で国葬が行われたのは、55年前の吉田茂の1例のみ。その後、1975年に死去した佐藤栄作は政府、自民党、国民有志の主催で一部国費で負担する「国民葬」。80年に死去した大平正芳以降は、内閣と自民党が費用を折半する「内閣・自民党合同葬」が慣例となった。
半世紀以上も前に封印された国葬を岸田文雄首相が復活させたのはなぜか。
理由について岸田首相は、「憲政史上最長の首相」「経済再生と外交の実績」など同じ説明を繰り返す。
だが、極めて異例となる国葬に国民の賛否は割れ、国葬への共感は広がっていない。各地で反対デモが起き、国葬差し止め訴訟も相次いでいる。
■反対56%、賛成38%
それでも着々と手続きが進む国葬を、どう受け止めているのか。朝日新聞が9月10、11日の両日実施した世論調査では、国葬に「賛成」は38%、「反対」は56%と反対が上回った。本誌も8月中旬の1週間、インターネットでアンケートを実施した。結果は、10代から70代まで261人から回答があり、「反対」が約77%で「賛成」の約19%を大きく上回り、双方から多くの意見も寄せられた。