
■「ここまで昭和な作り方をしている店はない」 都内の人気ラーメン店「麺作り」の秘密
JR常磐線・金町駅から徒歩2分、京成線・京成金町駅から徒歩1分のところに、人気の“呑める”ラーメン店がある。「立ち呑み居酒屋 金町製麺」だ。市場から毎日仕入れる日替わりのおつまみとお酒に、〆のラーメンが超本格的と人気の店である。店名には「立ち呑み」とあるが、店にはなぜか椅子がたくさんある。
店主の長尾優介さんは埼玉県三郷市出身。幼い頃からラーメンが大好きで、小学校時代から夢はラーメン屋さんになることだった。父が居酒屋で働いていて、夜ヘトヘトで帰ってきたところに長尾さんがサッポロ一番塩ラーメンを作ってあげていた。

高校卒業後は、武蔵野調理師専門学校へ。当時は「LA BETTOLA da Ochiai」の人気から料理人の中でもイタリアンがブームになっていて、長尾さんも卒業後はイタリアンの世界へ飛び込んだ。19歳から1年半修業をし、その後は友人の紹介で新宿の居酒屋で働いた。一緒に働いていた先輩が桜新町に居酒屋をオープンするということで、長尾さんも誘われる。しっかりとした和食の店で、4年間和食のイロハを教えてもらう。
いよいよラーメンの世界に入ろうと思った長尾さんは、バイク便の配達の仕事をしながら、各地のラーメン店を食べ歩き始める。有名店を回っている中で西武新宿線・都立家政駅近くにある「麺や 七彩」に出会った。自家製麺で無化調(化学調味料不使用)の店だが、当時はまだ製麺機やゆで麺機がなく、ボウルで麺をゆでていた。
その味と独創性に引かれた長尾さんは、渋谷の居酒屋のアルバイトで半年間食いつないだ後、独立前提で「七彩」に入社する。2008年、26歳の頃だった。
「『七彩』がオープン2年目だったんですが、何でもかんでも手間をかける作り方で、とても効率が悪かったんですね(笑)。 お店の人気が一気に伸びている時期で、忙しいのが当たり前だったんです。朝の6時に入って、夜中の1時とか2時まで働いていました。今思えば全て手作りなのが大きかった。忙しかったですが、どっしり腰を据えて作れたのも良かったです。麺は特に勉強になりましたね」(長尾さん)
店が忙しすぎて、長尾さんは朝から晩までほとんど仕込みをやっていたが、充実した日々が続いた。そんな頃、「金町製麺」オープンの話が持ち上がる。