ビデオ電話の背景変化が示す人生の動き(イラスト:サヲリブラウン)
ビデオ電話の背景変化が示す人生の動き(イラスト:サヲリブラウン)
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 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 コロナ禍が始まった2020年あたりから、遠方に住む友人たちも含めた3人と定期的にビデオ電話をしています。

 始めたころは毎週末、いまでは月に1度か2度。昔は暇だったし、不安もありましたからね。それでも、顔をみながら他愛もないおしゃべりに没頭できる時間を持ち続けられているのは幸せなこと。続けるための努力はしないけれど、できるだけ長く続けたい。

 決まった曜日、決まった時間、決まったメンバーで行われるビデオ電話です。2年以上の歳月が経過し、「第〇波」の到来にも悪い意味で慣れてしまった私たち。日々は変わらず過ぎていくものの、人生の停滞感は否めません。中年女性にとって「変わらないね」はうれしいワードのはずですが、こうなるとそうでもない。

そんななか、ふと気づいたのです。4人のうち、半分にあたる2人の「背景」が変わっていることに。

 ビデオ電話ですから、それぞれの人物の後ろには背景が映っています。仕事ではないので、ぼかしを入れたり特別な壁紙を設置したりすることはありません。「変わらないねえ」なんて2年以上言い続けていたけれど、背景が変わったということは、人生が動いている証拠ではないか。

 2020年初頭、ひとりは香港在住でした。少なくとも、あと10年20年は香港に住むと、本人含め誰もが思っていました。しかし、現在の彼女は様々な事情で東京在住です。

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