こうした状況に、千葉工業大学准教授の福嶋尚子さん(教育行政学)は「端末は基本、家に持ち帰らせないのがスジです」と語る。理由はこうだ。
「GIGAスクール構想は、もともと授業にICTを活用しようというものです。コロナ禍で端末が前倒しして配布されたので『オンライン授業のため』という見方が広がり、持ち帰りのニーズが生じました。でも、重さも含めて考えれば本来は学校で保管しておくのがベストなはずです」
福嶋さんが最も問題視するのは、持ち帰りの強制が「家庭の教育権」を侵害するという点だ。
「スマホやタブレットは『小学生のうちは触らせない』という方針の家庭もあったはず。そこへ1人1台配り、持ち帰りまで強制するのはおかしい。まさに学校が家庭に侵食してくる構図です」
端末を持ち帰る際は、壊れたときの修理費用の負担にも注意が必要だと福嶋さんは指摘する。扱いは教育委員会によって異なり、保険やメーカー保証でカバーする自治体もあれば、保護者に負担させる自治体もある。
「修理代が出るならいいですが、『壊れたら保護者が費用を負担する』という前提で持ち帰りを強制するのは、体よく家庭に責任を押し付けているだけとも考えられます」
さらに、学校が端末の持ち帰りを促す背景には「自治体による環境整備の不足」というハード面の問題も考えられるという。端末の置き勉を可能とするには充電機能がついた専用の保管庫などが必要だが、場所をとるために用意できず、やむを得ず各家庭に持ち帰らせていた例もあるという。
端末の配布が始まって約1年。学校現場はまだ手探りかもしれないが、子どもの時間はすぐ過ぎる。学校の事情だけで考えず、子どもの負担を減らすような環境整備が急がれる。(ライター・大塚玲子)
※週刊朝日 2022年9月16日号