■翠式カリー炒飯(中国料理 翠) 990円 ※目玉焼きトッピングは110円

総料理長の脇田忠雄さんは修業時代、隔週でまかない当番が回ってきた。先輩たちの定番はインスタントカレー。だが脇田さんは朝早く出勤し、ルーから手作りした。
大好評だった当時のまかないを数年かけてレシピ化したのが、翠式カリー炒飯だ。
ルーの大部分を構成するのは、牛肉の繊維。スジとバラにスパイスをもみこんで一晩寝かせ、鍋やオーブンで焼き、ひたすら煮込む。するとバラは溶けてスジは崩れ、小麦粉に頼らずともとろみがつく。うまみも十分なので、にんにくは入れない。くどくないのにコクたっぷりの秘密だ。
最後に、3日間かけた濃厚な“肉のルー”をパラパラの卵チャーハンの上へ。至高のマリアージュの完成。

東京都千代田区九段北4-2-25 アルカディア市ケ谷(私学会館)2階
■カレーライス(神楽坂 龍公亭)1500円

100年の歴史をもつ龍公亭。作家の嵐山光三郎さんや俳優の加賀まりこさんも「思い出の味」と語る名店だ。料理長は、初代・飯田栄吉さんの曽孫の竜一さん。レシピは受け継いでおらず、舌に刻まれた記憶を元にさらなるおいしさを追求する。
戦後にメニューに加わったカレーライスは“カレー味の中華丼”といった様相。最大の特徴は、煮込まず炒めること。エビやイカはプリプリ、タケノコやピーマンはシャキシャキの「具材を味わうカレー」。隠し味は使わず、スパイス、塩、ガラスープだけで勝負する「ひき算のカレー」でもある。シンプルだが、どこにもない味。愛されるわけだ。
東京都新宿区神楽坂3-5
(文/本誌・大谷百合絵)
※週刊朝日 2022年9月16日号