私自身、これまで何回も自分との約束を守れなかった経験があります。あれこれ言い訳をして約束を破ってしまうことは簡単だけれど、はね返ってくるリスクも大きいもの。それを知っているので、光代さんの努力には頭が下がります。
「『いやだなー』と思うことがあったら、『あ、後回しの癖が出ているサインだ!』と気づくんです。だから、そう思ったときほどすぐにやるようにしています。例えばお皿洗いとか、『いやだな』と思ったときは、自分のだけで済むんですよ。置きっぱなしにしておくと、家族の分が積み重なってくる。そのときの方がめんどくさいんですよね」
光代さん自身がそうやって変わっていくにつれ、家族との関係にも変化が出てきました。
片づけを進めるときには、どうしても家の持ち主である義父に相談しなければいけない場面があります。今まではすぐに対立してしまっていたところを、「この部屋の収納を空けてもいいですか?」「ここに取っ手をつけたいんですけど……」と、こまめにコミュニケーションを取りながら進めるようにしました。すると、どんどん義父との関係がよくなっていきます。
「私たちが住んでいる家は、義父が大工さんに頼んで建てたこだわりのある家。でも長年放置されていたところを、私がいろいろと考えて進化させているので、うれしく思ってくれているみたいです」
夫も今では光代さんと同じく、少し散らかっているだけで気になってすぐに片づけるようになりました。収入面の不安もきちんと話し合い、夫婦ともに副業や兼業など、さまざまな道を考えているところです。
「娘のトイレトレーニングが1週間で終わったり、弱っていた飼い犬がすごく元気になったり、片づけてからなぜかいいことばかり起こるんですよ」
と、光代さんは笑って教えてくれました。
光代さん本人も、今まで後回しにしていたダイエットに改めて取り組んだら、たった1ヶ月で5kgの減量に成功。これも「ここまでは食べていい」と決めた自分との約束を守った結果とのことです。
光代さんは今までの人生で、どん底だと思う状況になったこともあったと言います。
「でも、どんなときでも、自分さえやる気になれば前に進めるとわかりました。私にとって片づけは、自分の中の片づけでもあります。引き出しを1つずつ整理するように、自分ときちんと向き合うことができました。片づけで自分がここまで変われたので、何かに悩んでいる人に片づけのよさを伝えていけるような仕事もいいなと思っているんですよ」
きっとこれからも光代さんは自分と交わした約束を守りながら、理想の自分に近づいていくことでしょう。小さなことでも、自分との約束を守る大切さを改めて教えられました。
●西崎彩智(にしざき・さち)/1967年生まれ。お片づけ習慣化コンサルタント、Homeport 代表取締役。片づけ・自分の人生・家族間コミュニケーションを軸に、ママたちが自分らしくご機嫌な毎日を送るための「家庭力アッププロジェクト?」や、子どもたちが片づけを通して”生きる力”を養える「親子deお片づけ」を主宰。NHKカルチャー講師。「片づけを教育に」と学校、塾等で講演・授業を展開中。テレビ、ラジオ出演ほか、メディア掲載多数。