田中愛治(たなか・あいじ)写真左/ 1951年、東京都出身。早稲田大学政治経済学部卒、米オハイオ州立大学大学院で政治学博士号取得。2018年11月から早稲田大学総長/伊藤公平(いとう・こうへい)/ 1965年、神戸市出身。慶應義塾大学理工学部卒、米カリフォルニア大学バークレー校で博士号取得。2021年5月から慶應義塾長

伊藤:大隈先生は政治家、福澤先生は教育者と立場は違いましたが、二人はともに、民主主義への強い思いを持っていました。福澤先生が提唱し、現在も慶應義塾に受け継がれている精神に「独立自尊」があります。人間が自らの尊厳を守ると同時に、他者の独立や尊厳を大切にする。それがやがて地域や国の独立にもつながっていくという考え方です。

 大隈先生もこの志に共感を持って活動していました。東京専門学校を創立したのと同じ1882年、大隈先生が立憲改進党を立ち上げると、犬養毅や尾崎行雄といった慶應の出身者が門下に入り、民主主義を勝ち取ろうと奮起します。私学である早稲田と慶應のチームワークが日本に民主主義を根付かせたといっても過言ではないと私は思っています。

■福澤諭吉も実践 スマートの理想

田中:早稲田の建学精神の一つに「学問の独立」があります。近代国家を支える国民を育成するためには教育が必要で、そのためには学問が権力に左右されず独立していなければいけないと大隈先生は考えた。これは福澤先生の「独立自尊」の教えとも非常に近しい部分があると思っています。「ライバル」と目されるようになったのは早慶戦の応援に熱が入るようになったころからで、そもそもはお互いに学び合う関係性から始まっているんです。

 今も、慶應から学ぶことは多いです。例えば、私は以前から、慶應義塾大学の卒業生は愛校心が強いと感じていまして、なぜだろうと思い伊藤先生に聞いてみた。すると、一貫教育校である普通部や中等部、また大学でも、福澤先生ご自身の言葉で書かれた『福翁自伝』を新入生全員に配っているそうなんです。ああそうなんだと感心して、早稲田でも今年の入学式では、早稲田大学歴史館の館長が書いた『大隈重信と早稲田大学』という新書を新入生全員に配布しました。

──一般的に「早稲田はバンカラ」「慶應はスマート」というイメージがあります。実際はいかがでしょう。

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