谷本道哉さん
谷本道哉さん

 筆者にも心当たりがあるが、中高年になると人の名前は覚えられなくなるわ、離して本を読むのに自分の腕の長さだけでは足りないわ、食べ放題で元は取れないわと、身体機能は低下だらけ。一方、筋肉だけはちょっと違う。何歳になっても鍛えれば鍛えるほど、ちゃんと増える。「筋肉は裏切らない」は、いくつになっても真なのだ。

 老化の速度は緩められても元には戻せないという言葉を聞くが、「筋肉は鍛え方次第では、70代、80代、90代……本当に何歳からでも巻き戻せる。適切なトレーニングで、何歳からでも筋肉量を増やし、筋力をアップさせることは可能です」と、順天堂大学スポーツ健康科学部先任准教授で、筋肉ブームの立役者でもある谷本道哉さんが言う。

「筋肉などの運動器は、環境的変化の幅が広いですよね。例えば療養中で寝たきりの方など、ほとんど運動器に力は加わりません。反対に運動をすればすごく強い力が加わることもある。そうした幅広い刺激にさらされる運動器は、とても適応能力が高い。だから年齢にかかわらず、鍛えれば増やすことができるのではないでしょうか」

 筋肉は普通にしていたら年齢とともに減ることがわかっている。例えば落ちやすい太もも前の筋肉では80代で20代の半分程度になってしまうことも。若い人から火が付いた筋トレブームだが、中高年こそ必要なのだ。

 そこで中高年にとっての筋トレの注意点を、改めて大村さんに聞いた。

「何かの弾みでケガをしては筋トレが楽しめなくなってしまう。コケないよう注意が必要ですね。あと筋トレは、スケジュールなしで、むやみやたらにやるもんと違います。毎日時間を決めて、生活の一部にすれば、逃げるに逃げられなくなって、続くと思いますよ」

 大村さんの場合、朝決まった時間に風呂に入って頭を洗い、ヒゲも剃(そ)ったところで、着替えて筋トレを開始。用事でできない日もあるが、そういうときは「本当に身体が気持ち悪い」そうだ。

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