精神科医として、30年以上、高齢者医療の現場に携わる和田秀樹さん。作家・林真理子さんとの対談では、高齢者の人生について、語り合いました。
* * *
林:和田先生は、「週刊和田」って言われるぐらい、週単位で本をお出しです。昨年出した『70歳が老化の分かれ道』がベストセラーになって、今年も『80歳の壁』が35万部を超える(対談時)大ヒットだそうですね。
和田:初めての大ベストセラーで、「本が売れるってこういうことなんだ」と思って、林さんの気分にちょっとだけ近づきました(笑)。
林:とんでもない。この本がヒットした要因って、「80歳になっても好きなように生きなさい」というアグレッシブな生き方の提案ですよね。いままでこういう高齢者向けの本って「愛される年寄りになりましょう」みたいなことが書いてあったけど、先生の本は「愛されなくてもいい。自分勝手に生きましょう」と書いてあって、それが年配の人の心を打ったと思うんです。「たばこはやめなくてもいい」とか衝撃的なこともおっしゃってますね。
和田:東京の杉並に日本最初の高齢者専門の総合病院である浴風会病院というのがあって、僕はそこに1988年12月から勤めたんです。もともと関東大震災で家族が亡くなったお年寄り用の養老院だったところで、そこに入居している人を対象に、たばこを吸ってる人と吸ってない人の生存曲線を追いかけると、まったく差がなかったというデータがあったんです。その考察を読むと、「確かにたばこは体に悪いが、そういう人はホームに入る前に亡くなっている。ホームに入るまで生き延びた人に関してはそうとも言えないようだ」というふうに書いてあるんです。
林:喫煙者にとってはうれしいデータですね。
和田:ある年齢まで生き延びたら、食べたいものを食べればいいし、お酒も飲みたければ飲んでいい。余生のつもりでいればいいと思うんですね。大規模調査がないから、本当のところがわからないんですよ。だったら自分が生きたいように生きたほうがいいと思うんです。