和田秀樹さん(右)と林真理子さん(撮影/写真映像部・高橋奈緒)
和田秀樹さん(右)と林真理子さん(撮影/写真映像部・高橋奈緒)

林:自分でぶつかって死んでるんですね。

和田:そう。人をはねた死亡事故は2割。ところが、75歳未満だと単独事故が2割くらいで、人をはねた死亡事故が4割なんです。

林:なるほど、そうなんですか。

和田:もう一つ大事なことは、高齢者は動体視力が落ちて、ブレーキを踏む反応時間も遅いことはわかっていて、急に飛び出してきた子どもをよけられない可能性はあるんですけど、そういう事故は実際は少ないんです。僕も運転してるからわかるけど、高齢者マークをつけている車の多くってゆっくり走っている。報道されるほとんどは暴走とか逆走の事故なんです。

林:はい。

和田:ふだんおとなしい運転をしてる人が暴走するというのは、頭がぼんやりしてたからで、これは高齢者にわりと起こりやすいことなんです。血圧や血糖値を下げすぎちゃったり、塩分を控えすぎて低ナトリウム血症になったりすると意識障害を起こしやすいんですね。そうした点については注意したほうがいい。

林:先生はこの本の中で、「いま日本には600万人の認知症患者がいて、国民の20人に1人は認知症だ」とお書きになっていますが、年をとったらある程度は仕方がないものなんですか。

和田:いまの医学ではそうですね。僕が勤めていた浴風会病院では、毎年100例ぐらいの高齢者を解剖してたんですが、病理の先生は「85歳を超えてアルツハイマーがない人はいない」「80歳を超えて動脈硬化が起こっていない人はいない」と言うんです。つまり加齢による老化現象ですから、「ちょっともの忘れはあるけど、上手に生きましょう」「動脈硬化があるんだから、血圧や血糖値はむしろ高めのほうがいいかもしれない」と、そういう生き方に変えていったほうがいいと思うんです。

林:なるほどね。

和田:僕はいまでも脳の写真を年間100例ぐらい見てるんですけど、脳がすごく縮んでるのにしっかりした人もいれば、大して縮んでないのにボケボケの人もいるんですよ。だからやはり頭は使ってるほうがいいと思うんです。

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