もはやボールの緩急だけでは抑えきれないだろう。変則投手気味であったり、少しでも長くボールを持ったり、クイックを入れたりして投球フォームの緩急も混ぜないといけない。こちらの変化に少しでも崩れてくれることを待つ。それぐらい手がつけられない状況だ。
今はリーグ優勝だけでなく、3位以内はクライマックスシリーズ進出がかかる。セは3位までなら全球団にチャンスがある。9月、秋が深まると村上との勝負を避ける四球は確実に増える。相手は勝つために徹底してくるようになる。村上もそれはわかっているだろう。各打席を見ても、1球で仕留める意識は、甘い球をファウルにした時の悔しがり方でわかる。
バレンティンが60本塁打した時は、8月に18本塁打したという。投手の疲労がピークに達している8月に、いかに失投を逃さず量産できるか。村上にとって、プロ野球の記録を塗り替えるシーズンにする大切な月となる。
東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
※週刊朝日 2022年8月19・26日合併号