元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。
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年が明ける。いろいろあったが地球が滅亡することなく新年を迎えられることが幸せなのだろう。ってことで明けましておめでとうございます。
だがホッと一息などついている暇はないのであった。地球は滅亡してはおらんが、我が愛する世界に深刻な異変が起きていることをヒシヒシ感じる昨今である。
年末、近所の銭湯がついに閉じた。ガス契約をせず銭湯生活を始めて6年。その暮らしを成り立たせてくれた2銭湯のうちの1軒だ。天井が高くてタイル絵のある昔ながらの銭湯で、前の冬季五輪をフロントのソファで見知らぬ人とワイワイ見たことは忘れられない。おばあさまが一人で番をしておられたので「いつかは」と覚悟はしていたが、ついにその日が来てしまった。