日本一の陶磁器の産地と呼ばれる岐阜県では、陶磁器製のストローも登場した。色鮮やかな柄が絵付けされた美濃焼の「MYSTRO」(マイストロ)だ。

生みの親は、食器の卸販売会社カネスの常務取締役・酒井英臣さん。きっかけは2年半ほど前。得意先から美濃焼でストローを作れないのか、というリクエストがあったのだという。当初は「絶対無理です」と即答したという。
酒井さんは言う。
「円筒形に成型するなんて聞いたことがなかったし、陶磁器である以上、割れるリスクもあるので無理だと思ったんです」
■ウミガメの映像で決意
一度は断ったものの、本当に方法はないのか、どうしても気になった。ウミガメの鼻にストローが刺さった映像がショッキングだったからだ。当時、海洋プラスチック汚染を訴える映像として、世界中に衝撃を与えていた。
様々な窯元などに聞いて回り、通常の食器では使わない素材を使うことで、食器の数倍の強度の製品を作ることに成功した。
「釉薬(ゆうやく)のかけ方、絵付けの方法なども、試行錯誤を重ねて進化させてきました」
2年間で8500本を製造。地域の飲食店と連携し、MYSTROを持参すれば割引が受けられるプロジェクトも始めた。
「陶磁器は食器として身近な素材。熱伝導がよいのでおいしく感じるという声も聞きます」
舌触り、温度、味。隠し味のような繊細なひと味を飲み物に加えてくれる奥深きストローの世界。あなたも足を踏み入れてみませんか。(編集部・高橋有紀)
※AERA 2022年1月3日-1月10日合併号