契約金2700万円、年俸360万円で仮契約を済ませた落合は「打率2割8分、ホームラン20、打点80、そして、もちろん新人王を狙います」と高らかに宣言した。

 当時社会人経由でプロ入りした選手は、75年に新人王を獲得した阪急のドラ1・山口高志ですら「密かに新人王は考えていますが、まず1勝です」と控えめな抱負だった。

 これに対し、ドラフト3位ながら堂々と主軸打者並みの成績と新人王獲りを口にした落合は、記事のトーンからも、十分新聞の見出しになり得る規格外の存在だったことが窺える。

 入団1年目は、山内一弘監督と打撃理論が合わず、36試合出場に終わった落合だが、翌80年後半から1軍定着をはたすと、打率.283、15本塁打と入団時の目標に近い数字を達成。さらに3年目に首位打者、4年目に三冠王と大打者への道を歩んでいったのは、ご存じのとおりだ。

 昨年新たに入団発表の席に臨んだ下位指名の新人たちの中からも、未来のスターが現れる可能性は十分。彼らがどんな夢を語っているか注目したい。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。

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