図書館にとって認知症の人も、同じ利用者であることに変わりない。ただ、対応には注意が必要となる。症状を理解したうえで、対等に話を聞いて、忍耐強い丁寧な対応などが求められる。宮前図書館ではスタッフが認知症の対応に理解を示し、定期的に研修を受け、実践に結びつく勉強会をしている。さらに、福祉関連の部署やスタッフとも連携を進めているという。

 長野県の塩尻市立図書館はさまざまな世代向けのコーナーを設けているが、シニア向けに健康や食生活の本、パソコンやスポーツなど趣味の本を集めて置いている。老眼鏡や拡大鏡なども用意するほか、DVD鑑賞会を年4回開催し、懐かしい名作を中心に上映している。

 塩尻市立図書館も新型コロナウイルスが流行し始めたころは、コロナウイルスの影響がよくわからず、利用を制限するなどした。最近は「通常に戻して対応」(担当者)し、席を減らしたり、利用時間の短縮などはしていない。シニアを含め、利用者にはありがたい。

 大阪府の豊中市立図書館も、大活字本や手すりの設置など、シニアが利用しやすい環境を整える。居心地良く過ごせるように職員も対応に気配りをする。図書館は市内に9館ある。その一つの担当者はこう話す。

「話していて耳が遠い方には筆談にするなど、気をつけて失礼がないように対応している。お互いに理解し合えるように、コミュニケーションは工夫している」

 豊中市の図書館のなかには、終活や介護、健康などのシニアライフ応援コーナーを開設したり、新聞・雑誌コーナーでサポーターが利用者の見守り活動をしたり、認知症をテーマに医療健康講座を開設したりするところもある。

 神奈川県大和市は「健康都市」の実現を目指している。大和市文化創造拠点の「シリウス」に市立図書館が入る。その運営にかかわった呑海沙織・筑波大学教授(知識情報・図書館学類長)は「20年くらいの構想で、まちぐるみで図書館を核にしていこうと建てられた」と説明する。

 4階には健康・医療情報のユニークなコーナーがある。イベントコーナーでは毎日のように催しがあり、呑海さんは「高齢者向けと書くと来てもらえないので、大人向けとしている」と話す。

 岡山県の瀬戸内市民図書館はシニア向けにユニークな取り組みをする。「回想法」というもので、呑海さんは「認知症予防の一つとして、昔のことを肯定的に話して脳を刺激する」と解説する。

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