公共図書館は誰でも利用できるが、シニア向けの対応に力を入れる図書館が出てきている。

 神奈川県の川崎市立宮前図書館の舟田彰館長も、シニアの利用者が多いと感じており、休館日も図書館の周辺にいるのを見かけるという。休館日に出勤すると、なじみのシニアの人が「舟田さん、行くところがないからいるんだよ」と話しかけてくることもあるという。

 図書館に来るシニアは居場所がないだけでもない。舟田さんは「好きな本を読んで勉強される方はたくさんいる」と話す。閲覧室でシニアの利用者が、興味のある部分をノートに書いているのを見かけるという。ある利用者は「書くと頭に落とし込めて自分の知識になっていく」と話していたとも。

 宮前図書館は2015年度から認知症に関する取り組みを始めた。認知症に関する本をそろえた「小さな本棚」を設置。舟田さんは「コーナー化することで探しやすくなった」と話す。

 認知症に関連した本は、成年後見制度や介護関連ではそれぞれ違う場所にあった。認知症の当事者のことを書いた本は文学コーナーにあった。それらを認知症関連の本としてまとめた。

 小さな本棚は館内の奥まったところに設置した。本棚の前では、家族とみられる人が何かを探していることもあるという。奥まったところに設置したことで、人目を気にせず、安心して探せるのではとみている。

 宮前図書館が認知症関連コーナーを設置した背景には、さまざまな経緯があった。舟田さんによると、アクティブシニアの人に対して図書館が何をできるかという取り組みが最初だった。絵本の読み聞かせ講座を開くと、それならできるかもと参加するシニアもいた。舟田さんは「高齢者が読み聞かせて交流が生まれる」と期待していた。

■サポーターが利用者の見守り

 あるとき、宮前図書館に認知症の疑いのある利用者が何度か訪れることがあった。舟田さんによると、ある人の名前を挙げ、電話帳で探したいと相談に来た人がいて、探すのを手伝ったが見つけられず、帰っていった。あとでスタッフと話し、認知症の疑いがあり、今後はそういう人が増えてくるだろうと話し合った。それが認知症関連の対応を優先して進めるきっかけとなった。

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