そんなリックの真面目さが如実に表れたのが、06年10月1日のロッテ戦。この日は飯田哲也の引退試合だったが、4打席とも凡退し、有終の美を安打で飾ることができない。
そして9回2死、あと一人で飯田という場面で、リックは代打に起用された。
打席に向かう前、リックはネクストサークルの飯田に言った。「イイダサン、ガンバルカラ」。優しい心遣いに、飯田は涙をこらえることができなかった。
残念ながら、リックは二ゴロに倒れ、ゲームセットとなったが、何とかしてチームメイトに花を持たせてあげようと、一生懸命プレーした姿は、今でもファンの脳裏に焼きついている。(文・久保田龍雄)
●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。