水野雅文医師(左)の書籍『心の病気にかかる子どもたち』出版を記念して、尾木直樹氏(右)と対談(撮影/写真部・松永卓也)
水野雅文医師(左)の書籍『心の病気にかかる子どもたち』出版を記念して、尾木直樹氏(右)と対談(撮影/写真部・松永卓也)

尾木 コロナで20年3月から最長3カ月にも及ぶ一斉休校になりましたが、学校が再開した後、授業時間を増やすために、たとえば朝読書の15分を削るとか、昼休みを15分削るとか、現場はそういう状況に陥りました。また、運動会や文化祭、修学旅行といったさまざまな行事が延期または中止になり、そういう日常生活が失われたなかで心を病んでしまう子が増えてきています。また、オンライン学習になり、親が「うちの子が落ちこぼれてしまっては大変」と焦って子どもに教え始めた。その結果、学校だけでなく家までもが“学校化”してしまい、親子関係が崩れてしまったケースもあります。子どもたちは居場所を見つけられず、ストレスも発散できず、本当につらい思いをしていると思うんです。

水野 コロナの件は、子どもの成長も遅らせますけれど、自立も遅らせますよね。居場所がなくなってしまうというのは、つらいでしょうね。

尾木 今回の水野先生の本を読んで、精神疾患は早期発見、早期治療が大事なんだと改めて感じました。だとしたら、高校だけではなく、中学校の学習指導要領にも早急に載せてほしいですね。海外の研究では精神疾患を持つ人の半数が10代のうちに発症しているそうですから、義務教育段階から精神疾患についてきちんと教えていかないと。

水野 そうなんです。私たちもまず高校で教えて、次の学習指導要領の改訂では「ぜひ中学校にも」と、話をしています。そのためにはエビデンスが必要なので、教育すると行動面でも変わってくるということを実証していきたいと考えて、研究をはじめています。授業だけではなく、学校の健康診断に、心の健康診断、メンタルチェックを入れてはどうだろうかとも考えています。

尾木 メンタルチェックの導入は大賛成です。特にコロナ禍では、一刻も早く学校でメンタルチェックをしたほうがいいと思います。

――水野先生の書籍『心の病気にかかる子どもたち』は読者にどんなことを届けられそうでしょうか。

尾木 今回の水野先生の御本は僕自身も知っているようで知らないことが多く、学ぶことばかりでした。構成がわかりやすくて、イラストもふんだんに掲載されていて、子どもでも読みやすいと思います。特に、1章の心の病気に関する七つの「思い込み」は大事なポイントがまとめてあって、ここだけでもいいから保護者や学校の先生たちにぜひ読んでほしいと思いました。

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