東京都立松沢病院院長で精神科医の水野雅文医師。書籍『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)を出版(撮影/写真部・松永卓也)
東京都立松沢病院院長で精神科医の水野雅文医師。書籍『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)を出版(撮影/写真部・松永卓也)

水野 はい。私も当時、学習指導要領という言葉は知っていましたが、そのようなシステムとは知りませんでした。学会の先生方も受け入れてくれる学校に、出前授業という形で一コマだけ教えに行ったりして、いろいろ活動していたのですが、個々に活動していてもうまく広がっていかないなと感じだしていたところだったんです。その後は尾木先生のアドバイスを頭の片隅に入れながら、学会などでも要望を出して、とんとん拍子に進みまして、今般の改訂で高等学校保健体育の学習指導要領に入ることになりました。今年の4月から高校1年生の保健体育の授業で「精神疾患の予防と回復」という単元を教えることになります。

尾木 それはすごい進展ですね。学校で「心の病気」について子どもたちに直接教えられるようになれば、精神疾患についての正しい知識が身につきますし、精神疾患に対する偏見や多様性についても考えるきっかけになるのではないかと思います。「なにかあの子、最近様子が変だな」と、気になったときに、「もしかしたら、心の病気で悩んでいるのかもしれないな」と気づけるようになるかもしれないし、逆に、精神疾患について知らなければいじめの対象にもなりかねません。

水野 いじめは本当に深刻な問題ですね。いじめはそのときだけの問題ではなく、その後も精神疾患の発症に関わったり、もっと長い目で見るとトラウマになったり、人生の中で重い課題になっていくということが海外も含めてたくさんの研究報告が出てきています。

尾木 毎日毎日いじめられていたら、心を病むのは当然です。このコロナ禍では生きるのがしんどい子も急増していて、2020年の小中高生の自殺者は499人で、大学生、専修学校生まで入れると1039人と前年に比べて大きく増加しているんです。本当に深刻な事態です。

水野 子どもが減っていく中で、自殺が増えているというのは、深刻なことですね。

尾木 国立成育医療研究センターが2020年11~12月、小中高校生(715人)にアンケート調査したところ、中等度以上のうつ症状が、小学4~6年の15%、中学生の24%、高校生30%にあったというんです。高校生が多いんですが、中学生も24%と多いんです。

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