書籍『心の病気にかかる子どもたち』の1章に掲載されている七つの思い込み
書籍『心の病気にかかる子どもたち』の1章に掲載されている七つの思い込み

水野 ありがとうございます。評価をいただき、大変光栄です。教科書だけですと、授業の開始に間に合った学年の子はいいですけれど、その上の高校2年生には届きません。子どもたちだけでなく、親御さんにも精神疾患のことを知ってもらいたいと思います。そういう目的から、一般の人にも読んでいただけるものが必要だと思い、この書籍を書きました。

尾木 精神疾患について、これまでこんなにわかりやすく丁寧に書かれた本はなかったのではないでしょうか。従来のこういった心の病気の本は、文字ばかりで心が重くなるような、専門的な内容が多かったように思いますが、これは読み終わると心がパッと明るくなるんです。僕の経験上、「心の病気」で悩んでいる子どもや保護者は多いですが、精神科の受診にはなかなかつながりません。特にコロナ禍の今だからこそ、多くの方に読んでほしいですし、僕も自信を持って推薦したいと思います。

――あらためて、2022年度から高校保健体育の教科書に「精神疾患」が入ることで期待することをお聞かせください。

尾木 いじめ問題に関わっていると、他者への共感が欠落している子が多くなってきている印象です。そういう子がいじめの加害者になってしまう。海外では、いじめるほうに問題があると考え、カウンセリングや精神科の受診をすすめることもあるそうです。精神疾患について正しい知識を身につけることで、多様性を認め、他者に対する共感が育ってくれば、クラスの雰囲気が優しくなりますし、学校全体もよくなっていくと思います。そういう点では、学校で精神疾患を教えるということは、すごく大きな転機になるような気がしています。さらに、先生たちも「ひょっとしたら、心の病気じゃないかな」「精神科の受診をすすめてみようかな」というふうに、より一層子どもの理解が深まって、早期発見、早期治療につながるのではないかなと思います。

水野 それはすごく大事ですね。私が期待することは、授業を通してメンタルヘルスに関心が広がって、軽症の精神疾患でも「誰でもなるさ」では済まさずに、「専門家に相談してみよう」という行動へのテンポが速くなることです。精神疾患の予防という意味では、こうした変化が起きることが期待されます。また、日本は精神科の病床が多い国で、精神病床が世界で一番多いとされています。病院を退院した人たちが地域に戻ったとき、社会として優しく迎えられることがとても大事です。授業をきっかけに、社会としてどうあるべきかを考えてもらえたらと思っています。

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