■夢を描いて文理決める
同校OGでもある理科の藤野優佳教諭(27)は言う。
「小学生はたいてい、実験に興味があるし、理科が好きです。それが中学、高校となるにつれて難しくなって嫌いになる。そうならないように、中学生の低学年のうちに実験をなるべく見せるようにしています。実験をして、中学受験で覚えた知識が腑(ふ)に落ちるときがある。『あの知識はそういう意味だったんだ』と声が上がります。好奇心を刺激しています」
15年には「T-STEAM」というモノづくりプロジェクトを始めた。初年度は自動車メーカーのホンダと連携して、電磁気力の「クリップモーターカー」を作った。希望生徒が参加し、学年混合のコンテストをして競う。藤野教諭は言う。
「自分事として、自分が持つ知識と経験を総動員させる取り組みは記憶に強く残り、将来に生きていきます」
こうした積み重ねの結果、理系に強い女子校として知られるようになった。「子どもを理系に進ませたい」と相談する親がいたり、入学前から医師志望の生徒がいたりするという。
ただ、やみくもに理系を選ばせない。文理を決める前に、中学では生徒が興味のある卒業生の職場を訪れて、話を聞く機会を設ける。竹鼻校長は言う。
「なりたい職業に医師を挙げる生徒が多いのは、身近な存在だからということもあります。どの診療科がいいか、本当に自分は何をしたいのか、までは考えられていない。そこで現場の医師に会って話を聞くと、自分が将来働くイメージがわきます」
夢を描いてから文理を決める。
「苦手だから理系を諦めようという安易な選択をせずにすみます。自分の夢があるならどの科目も頑張ろうと思えるのです」
(編集部・井上有紀子)
※AERA 2022年1月24日号