なおも見せ場は続く。無死満塁で松井秀喜(巨人)が高々と右飛を打ち上げた。本来なら犠飛になってもおかしくないタイミングだが、捕球したイチローは間髪を入れず三塁に威嚇のダイレクト返球。レーザービームの前に、新庄は苦笑いしながらタッチアップをあきらめた。

 スタンドの誰もが息をのんだスリリングなシーン。にもかかわらず、イチローは「僕にとってはアベレージのプレー。スタンドのどよめきで逆に驚いた」とクールに言い放った。

 1打席目から3打席連続安打とノリにノッていた新庄も、6回無死二塁の4打席目は、イチローへの右飛に倒れ、“甲子園で本塁打”の公約ならず。「(打球が)上がらなかった。上げようと思ったら、やっぱり上がらなかった」と残念がった。

 だが、「あとはホームランだけ。狙います」と予告した7月27日の第3戦、新庄は1対0の6回に岩本ツトム(日本ハム)から左越えに球宴第1号を放ち、チームの全打点を挙げる活躍で見事MVPに輝く。

 一方、イチローは長嶋茂雄(巨人)と並ぶ14試合連続フルイニング出場を達成し、3試合で13打数6安打を記録しながら、一度もMVPに届かず、「ミスがあった。悔しさも通常より大きい」と最終的に新庄と明暗を分けた。

 2人は01年に揃ってメジャーに挑戦。同年10月11日、1年目のシーズンを打率.268、10本塁打、56打点と予想以上の成績を残して帰国した新庄は、翌年の抱負を聞かれると、「来年は飽きられるだろうし、何とか飽きられないようにしないと」と決意を新たにするとともに、「記録はイチロー君に任せて、記憶は僕に任せてほしい」とメジャー1年目にいきなり首位打者獲得のイチローを意識する発言をしている。

 そんな両者がメジャー移籍後、初めてツーショットになったのが、翌02年3月8日、マリナーズvsジャイアンツのオープン戦の試合前だった。

 あと11分で試合開始というときに、二塁後方でイチローと談笑していたバリー・ボンズが一塁後方で素振りに励んでいたチームメイトの新庄を呼んだ。 

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メジャー初対決の結果は?