新庄が笑顔で駆け寄ると、仲介役のボンズは「あとは2人で楽しめ」とばかりにベンチに引き揚げた。

 思いがけずグラウンド上でご対面となった2人は、お互い拳をぶつけ合って挨拶を交わすと、終始笑顔を浮かべながら会話を弾ませる。70秒ほどの短い時間だったが、新庄のユーモラスなジェスチャーに、イチローが手を叩いて大笑いするシーンも見られた。

 ともに1番打者として出場した“メジャー初対決”は、1回表にイチローが新庄の守る中前に安打を放ち、その裏、新庄も左翼線二塁打と気を吐いた。

 試合後は、「(メジャーで日本人選手同士が対戦)そういう経験ができるのは素晴らしいこと」(イチロー)、「楽しかったです」(新庄)とエールを交歓。日本から大挙してやって来た取材陣にとっても、最高のプレゼントになったのは言うまでもない。

 現役引退後は、別々の道を歩んでいる2人だが、近い将来、イチローがNPB球団の監督に就任し、“ビッグボス”新庄監督との対決が実現する日を夢見るファンも多いはずだ。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。

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