参考になるのが総務省の家計調査である。平均的な日本の家計が何にいくら使っているのかを毎月調査しているもので、標準を示すものとして「目安」にも使える。
この家計調査が支出項目として使っているのが、「食料」「住居」「光熱・水道」「家具・家事用品」「被服及び履物」「保健医療」「交通・通信」「教育」「教養娯楽」「その他の消費支出(交際費含む)」の10項目だ。ただし、リタイア世代は子供はすでに独立していることが多いから「教育」は省ける。「家具~」と「被服~」は統合してもいいだろう。
そこで、実際に書き込んで「わが家のリタイア後の生活費」として使えるように、この8項目を表にしてみた。家計調査では、「夫65歳以上、妻60歳以上の高齢夫婦無職世帯」のそれぞれの項目の毎月の支出額も発表されているので、それを右欄に示した。全国の標準額を目安にしながら、リタイア後の家計に思いをはせて表を完成させてほしい。
支出面では日々の生活費以外に、数年ごとや10年に1回、残りの人生で1回など大きなお金が必要になるイベント費用についても、できるだけ詳しいプランを作っておきたい。
一番大きいのは自宅のリフォームだろう。規模をどれぐらいにするかで価格はピンキリだからだ。しかし、リタイア後の長い年数を考えると、必ず1回は行わなければならない。最低でも数百万円は見積もる必要があるだろう。
地方や都市部でも郊外に住む人は自動車が日常の必需品になるが、これも結構な金額になる。10年に1回買い替えるとしても、リタイア後に1~2台は必要だろう。現役時代の暮らしぶりが良かった人ほど車には見えを張りたくなるものだが、こだわるとお金はすぐになくなってしまう。
そのほか、海外旅行や趣味などお金がかかるイベントは多いが、ポイントはまず「やりたいこと」を夫婦で話し合って、とりあえずすべてを盛り込むところからスタートするのがいい。リタイア後のプランを立てて、それを「家計の長期予想表」に落とし込めば結果がすぐにわかる。マイナスになれば希望どおりにはいかないわけで、そこから何を削るのかを考えていくのである。
自分で納得しながら、「実現可能で、かつ、希望に沿ったリタイア後の生活」を創っていく。「本格バージョン」に挑戦すれば、そんなことが可能になる。(本誌・首藤由之)
※週刊朝日 2022年1月28日号より抜粋