※写真はイメージです (GettyImages)
※写真はイメージです (GettyImages)
この記事の写真をすべて見る

 老後資金の世界が大きく変わりつつある。「100歳まで」と期間は延びても、給料は増えないまま。もはや定年までの準備では、お金が足りないことが明白になってきた。どうすれば老後破綻は防げるのか。新しい考え方と「自分シミュレーション術」を伝授しよう。

【100歳までの「老後資金」足りる?足りない?を考える手順はこちら】

*  *  *

 これまでのリタイア世代は、50歳ごろに子育てを終え、50代を「最後の貯め期」としてせっせと老後資金を蓄え、リタイア後は年金を中心に貯めた資金を取り崩していく──こんな姿が普通だった。つまり、「現役」と「老後」が混じることなくきっちり分かれていた。

 ところが、これからは現役時代の準備だけでは足りないのだから、そんなことは言っていられなくなる。これまで「老後」とされていた時期でも、マネー対策を講じなければならなくなるからだ。

 収入を増やしたいと思えば、手段として考えられるのは主に二つ。「働いて収入を得る」ことと、65歳受給開始が基本の年金を、もらう時期を遅らせて年金額を増やす「年金繰り下げを行う」ことだ。

 それぞれ、さまざまな選択肢がある。働く場合は、フルタイムなのかアルバイト的なチョイ働きなのかで働く期間や収入額が変わってくる。年金繰り下げは1カ月もらうのを遅らせれば0.7%年金額が増える。現在は70歳まで最長5年遅らせることができるが、今年4月からはそれが75歳までに拡大される。

 あまりやりたくないが、どうしても支出を減らす必要が出てくれば、もう一段の「家計のダウンサイジング(節約)」が必要になる。家計の見直しのポイントは、金額の大きな固定費を減らすことだ。必要のない生命保険に入っていないか、さして動画も見ないのに携帯電話に月1万円も払っていないか、などを自問自答する。

 そして、自分が持っているお金に働いてもらう「運用」も、これまで以上に重要さを増す。かといって高年齢になってから、リスクの高い個別株などに投資するのは、よほどの余裕資金がある人以外はやめておいたほうがいい。

 それよりは近年、国が「自助努力」を促すために整備した資産形成のための制度を検討したい。代表格は、利用できる人が大幅に増えた「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と18年に制度ができたばかりの「つみたてNISA」だ。

次のページ