◆マネーパーツを自分で組み立て
現役と老後を分けるのではなく、こうした「働く」「年金繰り下げ」「ダウンサイジング」「運用」などをマネーのパーツとして使いながら高齢期の人生を自分で組み立てていく、そんな時代に入ったとみていい。これまでのような「お金を使うだけの老後」から、「稼いで増やして使う老後」に変わりつつあるのだ。
しかし、各パーツをいつ、どのように使うかは、それこそ人それぞれだ。何より、自分の現状がどのような状態にあるかを把握していないと、先に進めない。ファイナンシャルプランナー(FP)の澤木明氏が言う。
「50歳になったら、100歳を見据えた老後のお金のことを考えるべきなんです」
まずは、自らの老後生活を予想し、家計の現状を総点検したうえで、FPの世界で「キャッシュフロー表」と呼ばれる「家計の長期予想表」の自分版を作ろう。そのために必要な作業の流れを示す。
ステップ1はリタイア後の支出の予想だ。この作業をするには、もちろん現状の把握が欠かせない。家計簿をつけている家計は「全体の1割程度」(澤木氏)というから、数カ月かけて月々の平均的な支出を洗い出してほしい。そして老後の生活レベルを夫婦で話し合って、大体の生活費を決めればよい。一つの目安は現役時の約7割だ。
◆長期予定表作り百歳まで安心に
ステップ2はリタイア後の収入の予想である。年金は毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」で金額を確かめる。もちろん夫婦2人分だ。50歳以上になると、実際にもらえるのに近い金額がわかるので便利だ。また、企業年金をもらえる人は、会社でもらえる期間と受給金額を確認しよう。
そしてステップ3は、現在の資産状況を把握することだ。これができれば現時点での自らの準備状況がわかるから、その意味でとても大切な作業だ。
複数の銀行に預けている預貯金は合算する。株式などの有価証券や持ち家などの不動産は、その時々の「時価評価」が基本だ。貯蓄性のある保険は「解約返戻金」が資産となる。住宅ローンや自動車ローンなど負債も合わせて記録する。