これはなかなか貴重な、メイコさんデビュー映画「江戸ッ子健ちゃん」を紹介した1937(昭和12)年の朝日新聞紙面。メイコさんは写真の左、学帽をかぶった少年「フクちゃん」を演じています(フクちゃんは、映画原作の漫画家、横山隆一の大ヒット漫画の主人公)。この撮影のために、いがぐり頭になったとのこと。右の少年、主役の「健ちゃん」を演じたのはエノケン長男の榎本鍈一さん。
これはなかなか貴重な、メイコさんデビュー映画「江戸ッ子健ちゃん」を紹介した1937(昭和12)年の朝日新聞紙面。メイコさんは写真の左、学帽をかぶった少年「フクちゃん」を演じています(フクちゃんは、映画原作の漫画家、横山隆一の大ヒット漫画の主人公)。この撮影のために、いがぐり頭になったとのこと。右の少年、主役の「健ちゃん」を演じたのはエノケン長男の榎本鍈一さん。

 その中の1つがキューピー人形です。戦禍を免れ、結婚したときも、子育てしている間もずっと私のそばで見守ってくれた守り神のような存在。このキューピー人形とお別れすることができれば、あとはどんなものでも処分できると思ったのです。「ありがとう。そしてごめんなさい。お別れのときがきたの」。そう言ってボロボロ涙をこぼしながらキューピー人形とお別れしました。

 エノケンさん以外にも古川ロッパさん、徳川夢声さん、森繁久彌さん、三波伸介さんなど、喜劇役者の方々との共演が多かったんですが、皆さんとてもおしゃれで、普段は二枚目なんです。優しい方ばかりで、たくさんのものをいただきました。当時の出来事を懐かしみながら、「いままでありがとう」「ごめんね」と一つひとつに声を掛けてお別れしていきました。

 他にも洋服や靴、食器やお酒など、人にあげられるものはさしあげて、自分が出演した映画やドラマの台本やビデオなども処分しました。

 その量、なんとトラック7台分。処分して気づいたのは、ものがなくなっても、その人との思い出は決して消えないということ。そして人生がぐっと身軽になって、前に進む気持ちになれるということでした。

■どうしても捨てられない、ひばりさんの思い出の品

 捨てられなかったものもいくつかあります。1つは、夫の神津さんから結婚前にいただいた山のようなラブレターです(笑い)。捨てるのは気分的に嫌ですし、他人に見られるのは神津さんも困るでしょうから、娘のカンナに預けました。

 困惑するカンナに、「あなたは物書きなんだから、何かの役に立つかもしれないでしょ。煮るなり焼くなりしてちょうだい」と、半ば強引に押し付けた感じです(笑い)。

 2つめが、田中角栄さんからもらったお皿。雑誌の対談で一度お会いしたら、なぜだかとても気が合ってしまって……。以来、家族ぐるみでお付き合いがありました。

 気さくできっぷの良いおじさんという印象で、夫によれば「自分以外で中村メイコと一緒に暮らせるのは田中角栄さんくらいしかいない」と、よく笑っていました。

 そして、何よりも美空ひばりさんとの思い出の品々は捨てられずに、「私が死んだらいっしょにお棺に入れてちょうだい」と伝えています。

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ひばりさんが亡くなった日にもらった品