ひばりさんは、私の長い芸能生活において、唯一、親友と呼べる存在です。初めて会ったのは私が16歳、ひばりさんは13歳。私よりも年下にもかかわらず、芸能人というのはファンの夢を絶対に裏切ってはいけないと話をしていて「スターは違うな」と感心したものです。いつの間にか仲良くなって、家に泊まりにきたりすることもありました。
「ひばりは、いつもセンターなのよ」と、新婚家庭のベッドの真ん中に陣取って寝てましたっけ(笑い)。
亡くなった日、病院に駆けつけると息子さんの和也さんから手渡されたのが、「泣き虫メイコが来たら、これを渡してください」というメモと、黒のサングラスとハンカチでした。それまでの人生の中で一番悲しい出来事がひばりさんの死であったことは間違いありません。
■おしゃれで笑顔のたえないおばあちゃんでいたい
86歳のときに、大腿骨を骨折して1カ月間入院、今でも自由に歩き回るのはできないんですが、それ以外はいたって健康。肉も魚も野菜もお米もなんでも食べます。ただ、昔から少食なので食べるのは、他の人の3分の1くらいの量。もちろん、毎日晩酌は欠かしません(笑い)。
私は放っておくとずっと飲んでいるんですが、同じ話を何度も繰り返すようになったり、声が大きくなったりしてきたら、夫が指摘してくれて「今日はここまで」となります。
これからは、お説教しない、清潔でおしゃれで、いつも笑っている。そんな、そばにいても嫌にならないおばあちゃんでいたいですね。
(構成・文/山下 隆)
※「朝日脳活マガジン ハレやか」(2022年2月号)より抜粋
なかむら・めいこ/1934(昭和9)年に作家、中村正常の長女として生まれる。2歳のときに映画「江戸ッ子健ちゃん」で芸能界デビュー。天才子役として注目され、榎本健一や古川ロッパ、森繁久彌など昭和を代表するコメディアン・俳優と共演した。1957(昭和32)年に作曲家、神津善行と結婚し1男2女をもうけ、「神津ファミリー」として親しまれる。映画、舞台、テレビでの活躍のほか著書も多数。近著に『大事なものから捨てなさい メイコ流笑って死ぬための33のヒント』(講談社)など。