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デビュー当初から「王道のJ-POPをやりたい」という目標を掲げ、それを実現してきた水野さん。「ありがとう」が高校の音楽の教科書に掲載されるなど、日本のポップスのスタンダードとなっている楽曲もある。流行の移り変わりが激しい音楽シーンのなかで、長く親しまれる楽曲を生み出す才能はもっと評価されていいだろう。
しかし本人は「たくさんの人に支えられて、“素晴らしいプロジェクトに参加させてもらった”という感覚。自分の才能では到達できなかったところにまで連れてきてもらいました」とこれまでのキャリアを振り返る。
「“よく書いたね”と自分を褒めたくなる曲もあるんですが(笑)、“自分たちの力で作った”という感じはどんどん薄れてますね。それをいちばん感じるのは、『YELL』。卒業式で歌ってもらうことが多いんですが、学生のみなさんの合唱を聴くたびに“この曲は、卒業していくみなさんのものだな”と実感して。自分たちが作った曲が聴いてくれた人、歌ってくれた人のものになるのはすごく嬉しいです」
その一方で、40歳を目前にして「次の10年はもっと自分の表現を突き詰めていきたい」という思いも。
「独立したんだし、ビジネスとしての音楽をしっかり考える方向もあるとは思うんですけど、自分には向いてない気がして。今年で40代になるんですけど、全速力で走れるのは最後のチャンスかもしれないし、やりたいことを追求するのもいいのかなと。息子が成人するときは50代になっているんですけど、子育てしながらがんばります」
(森 朋之)
水野良樹(みずの・よしき)/ソングライター。1982年生れ。神奈川県出身。1999年にいきものがかりを結成、2006年に「SAKURA」でメジャーデビュー。作詞作曲を担当した代表曲に「ありがとう」「YELL」「じょいふる」「風が吹いている」など。グループの活動に並行して、ソングライターとして国内外を問わず様々なアーティストに楽曲提供を行うほか、雑誌・新聞・ウェブメディアでの連載執筆など、幅広く活動している。2019年には実験的プロジェクト「HIROBA」を立ち上げ、様々な作品を発表している。2021年11月にエッセイ集『犬はうたわないけれど』(新潮社)を発売。
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