山下さんのことも、本に書くことで気持ちの整理ができたという。
山下さんのことも、本に書くことで気持ちの整理ができたという。

 独立直後にコロナ禍になり、予定していた全国ツアーも中止に。対応に四苦八苦していたところに重なったのが、メンバーの脱退だ。小学生の頃からの友人で、20年以上活動を共にしてきた山下穂尊さんがグループを抜け、新たな道に進むことを決めたのだ。

「本に書き下ろしの章を加えることになって。最初はコロナ禍で考えたことを書こうと思っていたんですけど、締め切り間際に山下がいきものがかりを抜けることになったんです。そのことしか頭になかったし、山下のことを書くしかないかなと。脱退を前向きに捉えているのはウソじゃないんですけど、もう30年くらいの付き合いだし、精神的な衝撃がないかと言われたらそうじゃない。ただ、山下に“違う道に進みたい”と言われたときに、“いや、待ってくれ”ではなくて、“そうなんだな”って頷いた自分がいたんですよね。友達として応援したい気持ちもあったし、(山下の脱退を)メンバーだけで決められたのはよかったです」

「デビューした後も、山下とはどこかで友達のまま。リハーサルであいつが居眠りしていても、“ほら、あいつ寝ちゃってるよ”って笑ってましたから(笑)」という水野さん。いきものがかりが水野さん、吉岡聖恵さん(ボーカル)の2人体制になったことで、“プロ”としての意識が強まったのだという。

■もう、青春物語には頼れない

 思春期における恋愛や友達との関係、将来に対する不安や希望など、“青春”を色濃く反映した楽曲によって10代、20代のリスナーに幅広く支持されたいきものがかり。もともとは友達同士ではじめたグループだが、メジャーデビューを果たし、音楽シーンの真ん中で活動を続けることで、メンバーはプロのアーティストに成長。山下さんの脱退により、水野さん、吉岡さんの音楽と向き合う姿勢もさらに変化しつつあるというわけだ。

「二人とも今まで以上に“音楽でがんばっていくしかないね”という感じになっちゃってます(笑)。これまでのような青春物語には頼れないし、“いい曲を作って、いい歌を歌う”ということを突き詰めないといけないなって。吉岡はもともと同級生の妹で、ずっと“近所のお姉さん”みたいなところもあったんだけど(笑)、客観的に聴いたときに“いいシンガーだな”と思うので」

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