■アライ先生増やしたい
出張授業は、「総合的な学習の時間」や「道徳」の授業、ロングホームルームの時間を使って行われる場合などさまざまで、1クラスの場合もあれば、学年全体、学校全体を対象にすることもあるという。
小学校低学年であれば「多様な性」といっても「性」の意識自体がまだ薄いことも多い。その場合は「一人ひとり違うんだよ」というメッセージに重点をおくなど、発達段階に合わせて目の前の子どもたちが一番受け取りやすい形でメッセージを伝えるように留意しているという。
「生の声を聞いてもらうことには力がある」(中島さん)という一方で、人的なリソースは限られ、行うことができる出張授業には限度がある。
そこでReBitでは、Ally Teacher’s Tool Kit(アライ先生キット)という教材キットを開発し、これを広めようと取り組んでいる。
教材キットは、子どもの困りごとや対応例について知るために先生自身が読むハンドブック、授業をするための指導の手引、映像教材、生徒用ワークシートなどがセットになったもので、これを使えば先生たちが自ら授業を行うことができる。
さらにキットにはアライグマのイラストをステッカーにした「アライ先生シール」も同封。名札や学級プレートなど目につくところに貼ることで、「味方だよ、相談していいよ」のメッセージを生徒に伝えることができる。
教材は教員向けには無償で配布し、その費用は企業や個人からの寄付でまかなっている。
「外から来た講師が1日だけ喋るのに比べて、やはり毎日接する先生が日頃から繰り返し話すことのインパクトは大きい」と中島さん。
先生自身の関心が高ければ、そのクラスは安心できる場になる。今後の課題は、クラスだけでなく学校全体を安心できる場にすることだと考えている。
「この先生が担任のクラスはいいけど、この先生のクラスはそういう場ではない、となると(当事者である子どもの)命の続き方が変わるかもしれない」
どの先生のもとで過ごしたとしても安心して過ごせる学校に。すべての子どもがありのままの自分で大人になれる社会に。それがReBitが目指している社会のあり方だ。(編集部・高橋有紀)
※AERA 2022年1月31日号より抜粋