「うちにはヘルシオがあるから、声だけほしいという友人や、これから君(坂井さん)が一家に一台という時代がくるかもねと言われたこともあります」

 商品に声を入れて命を吹き込み、商品の価値が上がり、オリジナリティーが生まれる。その役割のひとつを演じていることが嬉しいという。

「デジタルには出せない有機的なものが求められているようにも思いますね」(坂井さん)

 こうして広がりつつあるイケボビジネスの可能性について、世代・トレンド評論家でマーケティングライターの牛窪恵さんは、強い関心を持って見ている。

「声優やキャラクターの“推し”ブームもあり、音声メディアは広がりを見せ、発信側もかなり力を入れています」(牛窪さん)

 情報が氾濫してテキストの文字を追うのがストレスになり、音声を求めやすい傾向もあるそうだ。

「音声には、テキストの毎秒8倍もの情報を、感情を込め自然に伝えられる利点がある。近い将来、家電もパソコンのように、ハードはそのままでソフトだけを更新できるでしょう」(同)

 音声に感情移入したユーザーは、家電が壊れても別のモノにその音声を“移植”し、長く愛着を持つことができるはずだとみる。

 音声と香りは、記憶に残りやすく、思い出を呼び起こすとも話す。

「おばあちゃんの声で『ご飯だよ!』と話す炊飯器とか、お母さんの声で『おかえり!』と言ってくれる照明などの家電も出てくるでしょうね。感情移入しやすい声のビジネスは、ひとり暮らしが増えるほど人気が高まる側面もありそうですね」

(本誌・鮎川哲也)

週刊朝日  2022年2月4日号

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