今では「エヴァンゲリオン」の碇シンジ役などで知られる緒方恵美さんの声が「ウォーターオーブン ヘルシオ」に、「戦国BASARA」の伊達政宗役の中井和哉さん、真田幸村役の保志総一朗さんなど声優の声がホットクックに搭載できる。“推し”の声優やキャラクターの音声コンテンツを聞きたいために商品を購入し、料理が好きになった人もいるという。
「当社は家庭生活の環境を良くする製品を世に出そうと考えています。負担がかかる家事で“推し”の声が聞こえるとモチベーションも上がり、QOL(生活の質)も向上できると考えています」
と安田さんは語った。
公共交通機関でもイケボが採用されている。小田急電鉄の車内の自動アナウンスだ。20年3月に導入された通勤車両5000形で聞くことができる。イケボ自動アナウンスを聞くことを目的として乗車する人もいる。
「従来の女性の音声の自動放送とは異なる内容は、聞きやすく英語も話せる男性の音声をコンセプトにしています。素敵な声で聞きやすいというお声をいただいています」
とは小田急電鉄広報の谷内裕理さんである。5000形のほか、4000形車両の改修対象車両にも導入している。
◆商品に声が入り価値が上がる
イケボで話す声優はどう捉えているのだろう。
「キャラクターを演じる家電製品という依頼は初めてでした。収録の際はどんなことになるのかわからなかったのですが、実際に商品を見て、これは新しいし、おもしろいと実感しました」
そうイケボで答えてくれたのはオフィスCHK所属の声優・坂井ジェシーさんである。電子書籍「シャーロック・ホームズ」シリーズのシャーロック・ホームズ役などを演じる坂井さんはシャープの「ホットクック」など向けにホットクック船長はじめ3人のキャラクターを演じ分けて吹き込んだ。
坂井さんは家電製品なのに「キャラを立たせた声を」というオーダーに最初は戸惑った。京都市営地下鉄の案内や家電製品の普通の音声を担当したこともあった。クセのある声は役者にしかできないと思ったという。ナレーションやアナウンスだけでなく、家電製品にも活動の場が広がっていることを実感している。