高齢期に発達障害が表面化する要因として、定年退職、介護保険への移行、配偶者との離別、引っ越しなど、高齢化に伴う生活環境の変化が挙げられている。多くの場合、本人自身は困っておらず、家族や近隣住民などから相談が寄せられるケースや、周囲から勧められて本人が相談に来ることで表面化するケースが少なくない。家族からは、「昔から難しい人ではあったが、定年退職により家庭にいる時間が長くなり、一緒にいるのが大変」という相談が支援機関に寄せられるなど、まさに冒頭のA子さんの父の例のような流れから診断につながるケースが見られているという。これまで数多くの発達障害がある人を見てきた日詰さんは言う。

◆特性を知ると対策もできる

「発達障害がある人は、スケジュールや順番、行動などが決まった“型”の中で生きることが楽である人が多い。そういう意味で、会社はある種、そうした型になる。ですが退職することで、その型がなくなり、不安定になったり、難しさが見えやすくなることもある」

 支援機関においても、当事者が高齢者であると、どうしても高齢者支援に結びつけがちだが、発達障害の場合にはそれが合わないこともある。例えば発達障害の人に、認知症のケアをしても、うまくいかないことがあり、怒らせてしまうことも。

「例えば童謡や絵本を用いた認知症のケア。発達障害の特性がある人は、小さいころにいじめられた経験を持つ人が少なくない。だから幼少期のことを思い出す内容を示すと、不安や怒りの気持ちが出てくることがある。認知症を疑って高齢者施設などへ誘導すると、入所してからトラブルになることもあります」(日詰さん)

 一方、高齢者に受診をさせるのは難易度が高い。日詰さんは「受診をためらうのは当然のことで、無理に診断することはない」としながらも、「診断がつくことで楽になる部分も大きいはず」だと指摘する。

「実際に、発達障害の診断を受けて『よかった』という声も多い。生きづらさの中身がわかることにつながるし、自分の特性を客観的に知ることで、対人関係においても対策が立てられる。家族など周囲の人も、診断によって気持ちに余裕を持って接することができ、特性を知ることで“そういう特徴がある人”と思って付き合うことができる」

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