折山氏も、高木がイチ推しだと語る。
「誰よりも氷をつかみ取るのがうまい。メンタルが強く、自分がそのレースで何をすべきかわかっている。競技を心底楽しんでいるのも良い。3冠達成なら歴史的偉業です」
平昌大会500メートル金の小平奈緒(35)も健在。橋本氏は「本番までに本調子にもっていく才能が凄い。金の最有力候補」と、500メートル2連覇に太鼓判を押す。
ただ、小平の今季のW杯ランキングは3位。1位は急成長を遂げたエリン・ジャクソン(29)だ。ジャクソンは米国のスピードスケート女子で黒人選手初の五輪代表。まだ競技歴5年だが、今季W杯でのベスト記録は小平36秒764、ジャクソンは36秒809とほぼ互角。ジャクソンはスタートダッシュを得意とし、後半の伸びは小平に分がある。女王か、米の新星か、千分の1秒を争うレースが注目を浴びそうだ。
男子も3大会ぶりのメダルが射程に入っている。特に500メートルは、2020年世界スプリント選手権を制した新濱立也(25)を筆頭に、村上右磨(29)、森重航(21)の初出場3人組が、いずれも世界記録33秒61に迫る33秒台の記録を持っている。今季W杯の8レースで3人が獲得したメダルは計8個。「実力伯仲で圧倒的な強さの選手がいない混戦」(橋本氏)という構図で、日本勢による表彰台独占という夢さえ膨らむ。
余談だが、1998年長野冬季五輪の前年、長野県の吉村午良知事(当時)がスピードスケートのことを「ミズスマシ」と発言し物議を醸したが、橋本氏は「表現としては大正解。いかに滑らかに滑っているかの表現ですから、速い人ほどミズスマシなんです」と笑顔で語った。
スキージャンプ男子のエース・小林陵侑(25)は、“レジェンド”と言われたソチ冬季五輪銀の葛西紀明氏(49)が才能にほれこんで自身のチームにスカウトした逸材。実はこの1月、すでに大変な偉業を成し遂げている。伝統のジャンプ週間で4戦中3勝し、日本人初となる2度目の総合制覇を果たしたのだ。