カットや仕上げはプロにお任せするとして、日頃の手入れも大切。

 短く刈り込んだ髪形を除き、たいていはドライヤーやワックスを使ったセットが欠かせない。ただし、トリートメントには要注意。髪が柔らかくなるとボリュームが失われてぺったんこになってしまう。多少髪がごわつくような、石けん成分が主体のシャンプーで洗髪したほうが、ヘアスタイルがきまりやすくなるという。

 堀本さんは「ヘアスタイルを変えるだけで、人生は変わる」と言い切る。「あるお客さんは薄毛を隠すため、ヘルメットや帽子をかぶる工場作業員として働いていましたが、今は夢だったバーテンダーをしていますよ」

 服飾ジャーナリストの山本晃弘さんは、「髪は薄くなったらカリっと短く」が持論。30代前半から30年近く、坊主スタイルを貫いている。こだわりはサイドを短くしてトップを少し残すこと。ベストな状態を保つため、月3~4回は散髪に行く。

「人は”差”に目が行くものです。髪が薄くなったところを残し、ある程度生えているところを削ると、うまくいきます。そもそも細い毛をふにゃりと伸ばして様になる人は、ほんの一握り。リリー・フランキーさんのようなキャラクターが立ったおしゃれ上級者でない限り、基本的にだらしなく見えます。でもきれいに刈ってしまえば、誰でも清潔感が出せる。自分や周囲の受け止め方も、『はげてしまった』ではなく『意図的に坊主にしている』というポジティブなものに変わります」

 髪のボリュームが少ないぶん、ひげを生やしたり、眼鏡や帽子などの小物を活用したりして、顔まわりにアクセントをつけるとぐっとバランスがよくなる。

 山本さんも「ひげはほおや首まで生やすと山賊みたいになるから、口まわりを中心に残す」「メタルフレームの眼鏡は主張が弱い。顔の印象を変えるならセルフレーム(プラスチック素材)」というように、自分なりのルールを確立してきた。

 薄毛は工夫次第で目立たなくなり、個性としても生かせる。一人で解決できなければ、プロに相談を。なじみの床屋さんでも、通りがかりの眼鏡屋さんでも、快く相談に乗ってくれるはずだ。

 それにしても、世間ではなぜ「薄毛=恥ずかしい」とみなされるのだろう。山本さんに疑問をぶつけると、こんな答えが返ってきた。

「ハゲがダメというのは、社会の問題です。若さは素晴らしい、現役でバリバリ働く人はえらいとされる世の中では、老化の象徴である薄毛やシワは恐怖の対象となる。日本ではいまだに、リタイア後も人生をエンジョイする男性像が浸透していません。でも、仕事がなくなっても髪が減っても人生は続くし、あなたはあなた。いつまでも自分らしくハッピーに過ごすために、おしゃれは大きな力になります。『この年になって誰に見せるの?』じゃない。きちんと磨かれて輝く自分の姿は、自分自身を励ますんです」

(本誌・大谷百合絵)

※週刊朝日オリジナル記事

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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