人気アニメ「夏目友人帳」の聖地の一つ、熊本県人吉市にある田町菅原天満宮=2020年7月の豪雨後
人気アニメ「夏目友人帳」の聖地の一つ、熊本県人吉市にある田町菅原天満宮=2020年7月の豪雨後

 早い梅雨明け以降も活発な前線の影響などで線状降水帯が発生し、各地で被害が出ている。2年前の7月も、本県南部を襲った記録的集中豪雨で、死者・行方不明者は69人にのぼった。人気アニメの聖地としても知られ、復興を望むファンも多い。あれから2度目の夏を迎えた人吉市と球磨村の被災現場を歩いた。

【写真】駅待合室にある、映画「るろうに剣心~最終章~」で使用されたSL模型

 最初に足を運んだのは、2008年6月に本殿、楼門などが国宝に指定された人吉市の青井阿蘇神社。氾濫(はんらん)した球磨川から150メートルほどしか離れていない。

「泥水は本殿の床上50センチまで浸水しました。記録上初めてで、神職の装束や資料、古くから伝わる77振りの御神刀などもすっかり水浸しになりました」

 こう振り返るのは、第80代宮司・福川義文さんだ。

「社殿の復旧、修復はほぼ終えることができました。国宝指定10周年記念事業である国宝記念館の建築をスタートさせており、来春にはお披露目したい」(福川宮司)

 記念館の設計は、新国立競技場を手がけた隈研吾氏。ギャラリーや社務所を併設する予定だ。

「記念館建設と刀剣修復費用の一部をクラウドファンディングで募ったところ、ともに目標を超えました。特に刀剣は、目標金額500万円のところ総額約3549万円。感謝しかありません」(同)

 JR人吉駅は肥薩線が運休中のため他路線の乗車券販売はしているが、改札は閉まったままだった。人吉市は「肥薩線は、SL人吉をはじめとする観光列車で当地域に入り、温泉や観光名所、球磨川下りを楽しむ観光ルートとなっていました。地域としましては、豪雨災害からの復旧・復興にはJR肥薩線の復旧が必要不可欠」(復興政策部・竹内課長)と完全再開を目指すという。

利用客がいないため、長椅子が1個だけになった人吉駅の待合室。奥のオブジェは人気アニメ映画「るろうに剣心~最終章~」で使用されたSL模型
利用客がいないため、長椅子が1個だけになった人吉駅の待合室。奥のオブジェは人気アニメ映画「るろうに剣心~最終章~」で使用されたSL模型

 難題は復旧費用と、その後、だ。

 JR九州の試算では全線復旧に約235億円が必要。これを、災害復旧と治水を名目とした公共事業や復旧支援の補助金、さらに国と地元自治体の支援等で23億円前後に圧縮する方向で動いている。だが、新型コロナの影響で売り上げが低迷している同社にとって負担は大きい。

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人口流出が止まらず、過疎化に拍車