得点は伸びないですけどね。どうやったって、シリアスエラーというものが存在していて、そのルールにのっとるとPCS(演技構成点)は出ないので、どんなに表現がうまくても、どんなに世界観を表現したいって思っても、それが達成できたと自分のなかでは思っても、(得点が)上がらないのはわかっているので。それは冷静に考えたら悔しいことではあるかもしれないんですけど、僕はあのフリープログラムもプログラムとして満足しています。
えー、モチベーションについてなんですけど。うーん。そうですね……。正直な話、今まで4Aを跳びたいってずっと言ってきて、目指してた理由は、僕の心の中にいる9歳の自分がいて、あいつが「跳べ」ってずっと言ってたんですよ。で、ずっと「お前へたくそだな」って言われながら練習してて。でも今回のアクセルは、なんかほめてもらえたんですよね。一緒に跳んだっていうか。気づいてくださらない方も、ほとんど気づかないと思うんですけど、実は同じフォームなんですよ、9歳の時と。ちょっと大きくなっただけで。
だから一緒に跳んだんですよね。それが自分らしいなって思ったし、何より4Aをずっと探していくときに、最終的に技術的にたどり着いたのがあの時のアクセルだったんですね。なんか、ずっと壁を登りたいと思っていたんですけど、いろんな方々に手を差し伸べてもらって、いろんなきっかけを作ってもらって、上ってこられたと思うんですけど、最後に壁の上で手を伸ばしていたのは9歳の俺自身だったなって。最後にそいつの手を取って一緒に登ったなっていう感触があって。
そういう意味では、「あっ、羽生結弦のアクセル、やっぱりこれだったんだ」って納得できているんですよね。それがモチベーションとしてこれからどうなるかというのはちょっとわかんないですけど、まだ3日しか経っていないんで。あ、4日か。4日しか経っていないんでまだわかんないんですけど、でも、正直、今の気持ちとしては、あれがアンダー(ローテーション)だったとしても、転倒だったとしても、やっぱいつか見返したときに、「やっぱ羽生結弦のアクセルって軸細くて、ジャンプ高くて、やっぱきれいだね」って誇れるアクセルだったと思っています。