JR・東急(左)と京急(右)の二つの「蒲田駅」。両駅を結ぶ「蒲蒲線」ができると街も盛り上がると、地元も新線効果を期待する(photo 編集部・野村昌二)
JR・東急(左)と京急(右)の二つの「蒲田駅」。両駅を結ぶ「蒲蒲線」ができると街も盛り上がると、地元も新線効果を期待する(photo 編集部・野村昌二)
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 蒲蒲線、新横浜線、北港テクノポート線……。東京や神奈川、大阪など都市圏を中心に新たな鉄道の建設や延伸が相次いでいる。利便性の向上が期待されるが課題もあるようだ。AERA 2022年8月8日号の記事から紹介する。

【路線図】首都圏で計画されている新線のルートはこちら

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「蒲蒲(かまかま)線ができれば、アクセスもよくなって街も盛り上がると思うよ」

 東京都大田区の蒲田駅そばに40年近く住む男性(60)は期待をする。

 同区には「二つの蒲田駅」がある。JRと東急が一緒になった蒲田駅と、京急の蒲田駅だ。駅間は800メートル近くあり、移動には10分近く歩かなければならず「魔の800メートル」とすら言われてきた。不便さを解消するため区は1982年、基本構想を策定し、「新空港線」(通称・蒲蒲線)の整備に向け協議を進めてきた。

 そして今年6月、区は都との費用負担に合意。構想から40年。「悲願」に向け、ついに動き出すことになったのだ。合意したのは、東急多摩川線を矢口渡駅付近から地下化し、地下に新設する東急蒲田駅から京急蒲田駅まで伸ばす1.7キロの区間。総事業費は1360億円。国と地方(都と区)、第三セクターの3者で3分の1ずつ負担する。地方分の割合は都が3割、区が7割。2030年代の開業を目指し、17年間かけ黒字化する予定だ。松原忠義・大田区長は6月の会見でこう言った。

「鉄道整備と一体となった街づくりに取り組むことで、地域の活性化につなげたい」

■羽田空港アクセス線も

 今、東京や神奈川、大阪など都市圏を中心に新たな鉄道の建設や延伸が続く。

 首都圏は蒲蒲線のほか、相模鉄道の羽沢横浜国大から新横浜を経て日吉に至る相模鉄道・東急電鉄の「相鉄新横浜線・東急新横浜線(新横浜線)」が来年3月に開業する。宇都宮市と栃木県芳賀町(はがまち)が進める次世代型路面電車(LRT)として注目を集める「芳賀・宇都宮LRT」も来年3月以降に開業。さらに、JR東日本が手がける羽田空港と東京都心を結ぶ「羽田空港アクセス線・東山手ルート」は今年度に着工し、29年度の完成を目指す。

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