大阪では、大阪メトロ中央線を延伸させた「北港テクノポート線」の南ルート(コスモスクエア-夢洲=ゆめしま間)が24年度に開業。大阪中心部を南北に貫く鉄道新線「なにわ筋線」は31年の開業予定だ。
地方鉄道が衰退する中、都市圏で新路線のプロジェクトが続くのはなぜか。
中央大学の後藤孝夫教授(交通経済学)はこう指摘する。
「コロナ禍で落ち込みましたが、もともと蒲蒲線や羽田空港アクセス線、なにわ筋線はインバウンド(訪日外国人客)増加による空港へのアクセス向上を目的として開発を進めてきた路線。首都圏も関西も、戦っている相手は海外の都市です。海外から多くの客に来てもらうのが目的です」
一方、新横浜線や芳賀・宇都宮LRTは地域住民の利便性向上が狙いだと言う。
「例えば、新横浜線は、相模鉄道の西谷から新横浜を経て東急電鉄の日吉に至る路線です。神奈川県中央部と東京都心を直結させる新線で、所要時間の短縮や東海道新幹線へのアクセスが劇的に向上します」
期待は上がるが、課題はある。まず、多くの識者が前途多難と指摘するのが蒲蒲線だ。
蒲蒲線は将来的に京急蒲田から大鳥居駅まで地下で延伸し、大鳥居駅の手前で京急空港線に乗り入れ、羽田空港まで乗り換えなしで結ぶ計画だ。しかし、東急と京急とでは軌間(きかん)、つまりレール幅が異なる。前者は1067ミリ、後者は1435ミリ。現状では大鳥居駅から先、空港までの直通運転は不可能だ。
この点を大田区鉄道・都市づくり課の担当者は、
「関係者と検討しながら進めたい」
と説明するにとどまった。
蒲蒲線は黒字化できるか懸念があるというのは、鉄道ジャーナリストの松本典久さんだ。
「蒲蒲線は1日約5万7千人の利用者数を見込み、17年間で黒字転換を予測している。だが少子化で、しかもJR東日本が進める羽田空港と新宿方面をつなぐ羽田空港アクセス線・西山手ルートが完成すれば、利便性はこちらのほうが上。蒲蒲線は赤字として負の資産になってしまうのではないか」