佐藤愛子さんと林真理子さん、ふたりの作家対談が実現。断筆を宣言して話題になった佐藤さんですが、執筆を始めた意外なきっかけや、多くの作家仲間に囲まれた同人誌時代のことを語ってくださいました。
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林:ご無沙汰しております。
佐藤:もうヨレヨレなんですよ。耳は遠くなってるし、目はよく見えないし、杖なしじゃ心もとないし。達者なのは口だけだったけど、そのほうも大分弱ってきてます。
林:何をおっしゃいます。相変わらずおきれいです。昔、田辺聖子先生の何かのお祝いの会のときに、佐藤先生、黒い羽織に真っ赤な口紅をつけていらっしゃって、スピーチなさったら、あまりの美しさにみんなが「お~!」とどよめいたの覚えてますよ。
佐藤:林さんのホメ上手。ますますミガキがかかってきたわね。でも誰が聞いても頷くようなほめ方をしてちょうだいよ。
林:その田辺聖子先生も亡くなられて、昨年は寂聴先生も亡くなって、ほんとに寂しいです。
佐藤:以前はね、私のまわりにはいっぱい、人がいたのよね。父や母、兄姉、友達とか先輩が囲んでた。それがいつか少しずつ減っていって、だんだんスカスカになって、唯一、頼りにしていた瀬戸内さんが消えたら、冥土の風がね、まっすぐに吹き付けてくるって感じですよ。
林:先生は98歳になられて、先生より年が上の作家の方、もういらっしゃらないですよね。
佐藤:下は、津村節子さんが五つ下だけど、そのあいだは誰もいないんじゃないかしら。
林:今日は、本当にありがとうございます。週刊朝日は100周年を迎えるんですが、その記念号にこの対談を掲載させていただきたいんです。
佐藤:それまでに私、死んでたらどうなるの(笑)。私は11月が誕生月なんだけど、誕生日をお祝いしてくれた人に「来年はもうない。今年が最後」っていったら、あなたは去年もそういってた、おととしも、って……。
林:いえいえ、これを読んだら、読者の方は喜ぶと思いますよ。佐藤先生、まだこんなに若くておきれいだということがわかって。