佐藤愛子さん(左)と林真理子さん (撮影/写真部・東川哲也)
佐藤愛子さん(左)と林真理子さん (撮影/写真部・東川哲也)

佐藤:林さんのホメ上手(笑)。

林:でも先生、昨年雑誌で「さようなら」って書かれて……。

佐藤:もうろくなものが書けないの。断筆するなんて書いたものだから、もっと書けっていう手紙やら電話が来るんだけど、簡単にいうな、って怒りたくなるの。書くということを、サラサラとひとり言でもいってるように気らくに書いてると思うのか、ってね。いくら私でも、やっぱり世間様に向かってモノいうときは、身を削ってますからね。もう削る肉がなくなって、骨にまできてるんですよ、これでも。人は生きるために身を削ってる。作家はその点、削ってるようには見えないんでしょうね。ノラクラして好き勝手をいってる気らくな奴のように見えてるのかな。

林:20年前に『血脈』をお書きになったとき、この対談に出ていただきました。「私はこのあと『晩鐘』を書いて、そしたらもう死ぬと思います」とおっしゃっていたのに、そのあともずっとお元気で、しかもベストセラーをどんどんお書きになって、『九十歳。何がめでたい』(2016年)は100万部を軽く超えたんですよね。

佐藤:不思議ですね。何が面白いんだろう(笑)。

林:先生じゃなきゃ書けないようなことが満載で、「ガタガタ言うな」とか「こんなことにこだわるほうがおかしい」とか。

佐藤:「うるせえな」とか(笑)。人は「ズバズバ言ってる」と思うかもしれないけど、私はこれがふつうなのね。

林:先生はネットの炎上なんかコワくないですよね。

佐藤:ネットっていうの、見たことないんです。見なければ、それで平和です。

林:ああそうか。そういう物書きがいちばん強いですよ。

佐藤:ネットみたいなものをいちいち気にしてたら、私なんか生きてこられなかったですよ。

林:先生は、昔の作家はこうだった、ああだった、ってあまりお書きになりませんが、遠藤周作先生や北杜夫先生と仲がよかったんですよね。

佐藤:北杜夫さんは彼が学生のときからの友だちです。

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