敗戦と、焦土からの奇跡的な復興。激動の昭和は89年1月7日、「天皇崩御」により終焉(しゅうえん)を迎えた。昭和天皇は十二指腸部付近の腺がんのため87歳をもって逝去された。1月20日号は、111日間にわたる闘病生活を検証しているが、「いまだから知りたい陛下治療の『なぜだ』」との見出しでこう問題提起している。

<侍医団の中に、なぜ消化器病学の専門医を緊急に加えなかったのか>。また、天皇が吹上御所の寝室で闘病を続けたことについて<設備の充実している都内の病院で治療を受けることはできなかったのか>。CTやMRIなど新鋭機器による精密検査はできなかったと指摘。体力維持に効果的と見られていたIVH(中心静脈栄養法)も見送られた。なぜか。本誌は、推測として侍医団が緩和ケアを優先させたことと、「玉体意識」を挙げる。

<陛下の身体を「玉体」とみる見方が、陛下にいちばん身近にいた人たちに最も強かった、とはいえないだろうか。だから、陛下の身体に傷がつくことを何より恐れ「積極策」をとることをためらった>

 戦史・紛争史研究家の山崎雅弘氏が指摘する。

「『玉体』という言葉じたいが大日本帝国時代のものです。皇室を取り巻く外側の人たちのほうが、封建時代のイメージにとらわれているように感じます。こうした問題はきちんと総括しないと同じことが繰り返されかねない。生前退位の話が出たときも『国体に反する』と主張した人たちがいましたが、ご高齢になれば公務もつらくなるし、終身天皇は非人道的です。健康への思いやりもありません。上皇もいまの天皇も憲法を順守することを表明されています。古い制度を押し付けるようなことは改めるべきです」

 過度な自粛ムードが終わると、日本はバブルの狂奔へと戻っていった。(本誌・亀井洋志)

(週刊朝日2022年2月25日号より)
(週刊朝日2022年2月25日号より)

週刊朝日  2022年2月25日号

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