さらに副作用が少ないのもメリットの一つ。前述のアメリカの臨床試験でも、手術では肺障害は30人、心臓障害は10人など、副作用が出現した人数が多く、程度が重いケースもあったが、SBRTは入院を要する副作用が1人、投薬が必要な副作用が2人確認されたのみだった。

 手術が可能であってもからだに負担がかからない放射線治療は、有力な治療の選択肢になり得る。しかし選択肢を示されないまま「元気なら手術」を勧められることが多い。

 神奈川県在住の68歳の男性は、2年前に大学病院でI期の非小細胞肺がんと診断された。呼吸器外科の主治医からは「手術で治りますよ、よかったですね」と声をかけられ、治療の説明も手術に関することのみ。ほかの治療法の説明はなかった。主治医や看護師は「手術を受けるもの」として説明を続けたが、10日間の入院が必要で、認知症の妻を介護している男性が1泊でも家を留守にするのは難しい。また、エレベーターのない古い団地の5階に住んでいるため、肺の一部を取って呼吸機能が落ちるのも不安だった。

 悩んだ末に「今は手術を受けることができない。先に延ばしたい」と主治医に告げたところ、ようやく放射線治療やもっと小さく切る手術法もあることを伝えられたという。武田医師は言う。

「ガイドラインのような基準は必要ですが、患者さんにはそれぞれの生活や考え方がある。医師は一番手の治療だけでなく、ほかの治療の選択肢を示し、そのうえで患者さんに適した治療法を説明すべきです。患者さんも医師任せにするのではなく、きちんと情報を得た上で、治療後のQOL維持や人生観などを考慮して、主体的に治療法を選択してもらいたいと思っています」

 2月26日発売の週刊朝日ムック「いい病院2022」では、がん放射線治療の病院ごとの治療数などを掲載しているので参考にしてほしい。

(文・谷わこ)