※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 肺がんの新規罹患者数は、がんの中で大腸がん、胃がんに続き、第3位。死亡者数はトップだが、近年は5ミリ程度の大きさから検出可能なCT検査などが普及し、根治が可能な早期段階で見つかるケースが増えている。

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 一般に早期固形がんの根治を目指した治療として一番に選択されるのは手術で、肺がんも同様だ。一方、からだにメスを入れない「放射線治療」は、高齢や持病があるなど手術が受けられない場合の二番手の治療に位置付けられてきた。しかし近年の研究で、手術と同等の治療成績を示す結果が出てきている。

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 日本肺癌(がん)学会は「肺癌診療ガイドライン」で、肺がんの標準治療(=現時点で最も推奨される治療)を示している。肺がんの9割以上を占める非小細胞がんのI期とII期は、「肺葉切除術+縦隔リンパ節郭清」が標準治療だ。肺は、右肺は三つ、左肺は二つの「肺葉」と呼ばれる塊で構成される臓器で、肺葉切除術はがんが見つかった肺葉と転移しやすい縦隔リンパ節を手術で切除する。しっかりがんを取り除くことで根治が期待できる治療だが、全身麻酔をかけてメスを入れ臓器の一部を取り出す以上、からだに負担がかかる。ガイドラインでは、高齢で体力が低下していたり、持病があったりして手術ができない人の二番手の治療として、放射線治療を推奨してきた。

 二番手では手術ほどの効果は得られないだろうなどと考えがちだ。しかし大船中央病院放射線治療センター長の武田篤也医師は、「放射線治療は根治が期待できる治療です」と話す。

大船中央病院放射線治療センター長の武田篤也医師
大船中央病院放射線治療センター長の武田篤也医師

 早期非小細胞肺がんで使われているのは、ピンポイント照射と呼ばれる「体幹部定位放射線治療(SBRT)」という高精度な照射法だ。病変部の形状に合わせ多方向から1点に放射線を集中させるため、根治性は極めて高く、周辺の正常組織の被ばくは最小限に抑えられる。1回につき従来の5~10倍の線量を当てることができ、治療は短期間で済む。

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