治療後の3年生存率はSBRTも手術も91%、5年生存率は、SBRTが87%、手術が84%だった。SBRTは、早期肺がんの標準治療である手術とほぼ同等の治療成績が示せたことになる。

 また、がんの再発がない状態で生存した「無増悪生存(PFS)率」は、SBRTの3年PFS率が80%、5年PFS率は77%だったのに対し、手術はそれぞれ88%、80%。「SBRTは手術に比べると早期再発がやや多い可能性があると解釈できる」と武田医師。手術は転移の可能性があるリンパ節も含めて切除して転移の有無も確認できるのが強み。一方、SBRTはがんのみに放射線を照射するのでリンパ節に対しては無治療になることが一因と考えられるという。

「SBRT後のリンパ節再発は、再発がわかった時点で手術などの局所的な救済治療をおこなえば、命にかかわることは少ない。実際、がんが原因の死亡のみにしぼった生存率は、SBRTも手術も90%を超えていて、がんで死亡した人はごくわずかでした」(武田医師)

週刊朝日ムック「いい病院2022」より
週刊朝日ムック「いい病院2022」より

■通院で5回、仕事をしながらでも治療できる

 今回の論文は、「RCTではないが、手術可能な早期非小細胞肺がん患者の全生存期間と無増悪生存期間でSBRTが手術に対して劣らない」とし、「SBRTと手術の役割は、RCTで裏付けられるまで、議論、研究、検証が続けられるべき」と付け加えている。武田医師は言う。

「手術と比較したRCTの結果がないという点では、手術も可能な患者さんがSBRTを標準治療のひとつに加えるにあたってのエビデンスはまだ乏しいといえるかもしれません。とはいえ、個人的には、SBRTは手術にほぼ匹敵する有力な治療だと考えています」

 侵襲性やQOL(生活の質)の面では、むしろSBRTのほうに分がある。手術は通常、1週間は入院が必要で回復にも時間がかかるが、放射線治療は無痛無血。SBRTは一般的な放射線治療よりも治療日数が少なく済み、通院で5回、仕事をしながらでも治療できる。

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