イラスト/小迎裕美子(AERA 2月28日号から)
イラスト/小迎裕美子(AERA 2月28日号から)

 度重なる緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令で、離れた家族と直接顔を合わせられない日々が続いている。デルタが弱まったと思ったら、今度はオミクロン。一時的な収束はあっても、なかなか終息にまでは至らない。

 だが、コロナという共通の敵ができたことで、親子の絆が強まったと感じる人も多い。長引くばかりの「会えない」が、親子のコミュニケーションの量と質を変えている。

 親子関係の調査をしている「オヤノコトネット」によると、およそ33%の人がコロナ禍で親子間のコミュニケーションが増えたと感じている。距離を取らざるを得ない状況下なので「減った」の回答も24%だったが、思いの外、親子の関係性が「密」になっているといえる。

AERA 2月28日号から
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 また、冒頭の男性のように、LINEなどのITツールを親子の会話で使う人も増えてきた。これこそがコロナ禍に起きたコミュニケーションの変化の一つだ。ソーシャルディスタンスの最中に、親子の心の距離は近づいている。

■話に困ったら「コロナ」

 都内在住の女性(51)も、その一人。九州に住む両親との関係について、こう明かす。

「会いたい気持ちはあるけれど、実は親と話すことはそんなにはなかったんです」

 話すことがイヤではない。話すことがないだけ──そんな距離感を絶妙につないだのが、iPadだった。

「LINEやラジオ、YouTubeなどのアプリをひと通り入れて送りつけました。最初は両親もオロオロしていたようですが、初めてビデオ通話したときは大喜びでしたよ」

 会話のネタがなくなることはよくあった。だが今は、困ったときのコロナトーク。これまでにないほど話が続く。ガラケーは常に電源オフでパソコンも年賀状の宛名作成にしか使わなかった両親だったが、幸い家にWi‐Fiは通っていた。

 女性は、親とiPadとの邂逅を、「石器時代の原始人が火を見た瞬間のよう」とたとえる。今では、両親ともにネットサーフィンを満喫。画面に保護フィルムを貼り、赤のケースを付けてタブレットライフを楽しんでいるという。

 昭和の荒波をくぐり抜けてきた老親世代にとって、ツールの変化は子どもが思っている以上にポジティブに受け止められているかもしれない。(編集部・福井しほ)

AERA 2022年2月28日号から抜粋

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