そのへん、上手くやったのはブルーザー・ブロディだろうね。彼も最初に来日したときは、どうしていいか分からなくて困ったらしい。そのとき、一緒にツアーを回ったのがハワイ出身のキング・イヤウケアで、ブロディはイヤウケアが場外で暴れまわっているのを見て、そのスタイルを取り入れたんだって。海外では場外に行こうものなら、殺気立ったファンにナイフで刺されてしまうから、絶対に場外で暴れるようなことはしないんだ。でも、日本だとその心配もなく大いに暴れられるし、ファンも喜ぶだろう(笑)。

 そんなブロディだが、たしか北海道の稚内の試合だったと思うけど、いつも通り場外で暴れていたら、逃げられなかったおばあちゃんがひっくり返ってしまって、思わず手を差し伸べて助けたこともあったね(笑)。さすがのブロディもおばあちゃんを蹴とばすわけにもいかず、彼の素の部分が見られて印象に残っているよ。ファンの中にはブロディの荒々しい性質が生まれ持ってのものだと勘違いしているかもしれないが、根は優しい人間なんだ。

 それから、俺のことでもみんな勘違いをしているようだから言うが「天龍源一郎は天然パーマじゃない」んだ。この髪は理髪店でパーマをかけていて、本来はすごい直毛、ストレートヘアなんだよ。

 なぜこの髪型にしているかというと、相撲を廃業して断髪式をやった後、朝起きたらまげのクセもあって髪が真上にまっすぐビーンと伸びていたから。セットしようにもどうにもならなくて、そのままで会社(全日本プロレス)に行ったら「パーマをかければいんだよ」って言われてね。それ以来、セットするのが面倒というのもあって、ずっとパーマをあてている。よく思い出してほしい。力士が引退してまげを切った後、大体はみんなパーマをかけて俺みたいな髪型にしているだろう?

 26歳の頃から50年近くこの髪型だけど、一度だけ丸刈りにしたことがある。これもパーマに飽きたり、面倒くさくなったから坊主頭にしただけなんだが、家族に大ひんしゅくを買ってね。パーマのイメージで売っているんだから、勝手なことをするなって。しょうがないから「初心に返るために坊主頭にした」ということにして、第一試合で戦ったりね。何も考えないで坊主頭にしただけなのに、なんか殊勝な人間のようになってしまったよ(笑)。

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金銭の勘違いでは女房に怒られてばかり