しかしその一方で改善しているのが失策数だ。2008年からは9年連続で二桁失策を喫していたが、2017年以降の5年間では4度の一桁を記録しているのだ。過去2年間はいずれも自己最少となる4失策で、守備率も2年連続でリーグトップの数字をマークしている。守備範囲が狭くなった分、これまで追いついた打球でエラーが記録されていたものが減ったということも当然ありそうだが、かつては5年連続で15以上の失策を記録していたのが4個まで減少しているというのは技術的な向上があったと見るのが妥当だろう。セイバーメトリクスで失策を抑止したことによる貢献度を示す指標である「ErrR」を見ても、昨年が最も高い数字となっており、守備のミスが減っていることは明らかである。瞬発力が落ちた分を技術でしっかりとカバーできていると言えそうだ。
今年もここまでキャンプは順調に過ごしており、3月3日の西武とのオープン戦でも4度の守備機会を無難に処理している。チームはリーグ3連覇を逃したことで世代交代の機運が高まり、高校卒2年目の中山礼都もアピールを続けているが、まだまだ坂本が大きな壁となって立ちはだかる可能性は高い。40歳になってもレギュラーのショートとしてプレーし続けている、そんな姿を見たいファンも多いのではないだろうか。前述したように既に歴代トップの数字もいくつかマークしているが、ここからさらに前人未到の領域へと突き進んでいくことを期待したい。(文・西尾典文)
●プロフィール
西尾典文1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。