山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
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 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「スポーツ貧血」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

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 新型コロナウイルス感染症拡大から、はや2年が経過しました。今年の1月から新規感染者数が急増したオミクロン株の感染拡大ですが、Our World in Dataによると、100万人あたりの新規感染者数が724件だった2月9日をピークに、新規感染者数は減少傾向をみとめており、3月5日時点で100万人あたりの新規感染者数は510件でした。

 外来の方では、新型コロナウイルスを強く疑う症状の方は減ってきている印象です。とうとうシーズンがやってきてしまった花粉症の方が多く受診されている印象です。感染者数の減少傾向や、3回目の接種が進んでいることもあるのでしょうか。「オミクロンの感染拡大の時は一旦中止していたテニスを再開しました」なんていう声もちらほら聞こえています。感染対策には気をつけながら、からだを動かすことを開始、ないしは再開することを選択されているようです。

 先日、東京マラソンが行われましたが、マラソンは貧血を来しやすい競技の一つです。貧血外来をやっていることもあり、部活動でスポーツをしている中高生や大学生、趣味でマラソンなどの運動をしている成人の方もたくさんお越しになります。

 スポーツによって引き起こされる貧血を「スポーツ貧血」と呼んだりもしますが、貧血はスポーツ選手にとって深刻な問題です。例えば、ハンドボールやバレーボール、サッカー、柔道のプロ女性選手を対象とした研究によると、鉄欠乏性貧血の有病率は2%であり、FIFA女子ワールドカップ出場したプロサッカー選手を対象とした調査では、鉄欠乏性貧血の有病率は29%でした。トップレベルのバスケットボール選手を対象とした調査では、鉄欠乏性貧血の有病率は男性が3%、女性が14%であり、冬季オリンピックに出場するノルディックスキーやアルペンスキー、フィギュアスケート、スピードスケート、アイスホッケー選手を対象とした調査によると、鉄欠乏性貧血の有病率は男性が7%、女性が8%でした。性別に関係なく、貧血はスポーツ選手にとって健康問題であることがわかります。

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アスリートや運動習慣のある人に定期的な血液検査は必要